【コラボ】ブラック・メール
犯人は誰だ
「では、織田様にお心当たりはない、と」
セッテはそうですよね、とにこやかに笑いかける。
打ち合わせ用の小さなテーブルで、向かいに座った新郎が、こくりとうなずいた。
イメージと違うと、セッテは思った。
新郎の織田春彦は、ひょろりとして、古いメガネをかけている。
服装も地味なら、顔も地味だ。
この男に脅迫状を出してまで結婚をやめさせようとする女がいるだろうか。
失礼な話だが、セッテはもっと美男を想像していたのだ。
今日はセッテが同席する、初めての打ち合わせの日だった。
まりあが、新婦に『新作のドレスが入ったので、一度試着してみませんか』と、誘う。
そのすきに新郎に話を聞いておいておくという段取りだ。
もし過去の男女関係が関わっているとしたら、お互い素直に話をすることはないだろうと思われたので。
ひとりひとり、別々に話をすることにしたのだった。