【コラボ】ブラック・メール
猫が派遣された理由
ある結婚式場のスタッフ、安城(アンジョウ)まりあは、いつもより緊張していた。
従業員の打ち合わせ用の会議室で、式場のマネージャーが自分の隣に座っているからだ。
これは、おかしい。
普通会議をするなら、真正面に座るはずだ。
いつも仕事に厳しく、ぴりぴりしている女上司(40代・既婚)の横は、とても居心地が悪かった。
自分から気安く話しかけるわけにもいかないし、相手も気さくに話をしてくれるキャラではない。
そして、今この式場が巻き込まれつつある事件のことを思うと……。
まりあは、ため息をつきたい気分になった。
「あの、コーヒー、もう一杯いかがですか?」
「いいわよ、もうすぐ来るはずだから」
もうすぐ来る、というのは、
マネージャーとまりあが待っている客人のことである。
彼等を迎えるために、自分達は横並びに座っているのだ。
正面に、彼らの為の席を作って。
狭い会議室の、狭いテーブルにマネージャーと二人きり。
この辛い状況から、早く救ってほしいとまりあが願った時……。
その扉が、二回叩かれた。