【コラボ】ブラック・メール
『猫』というのは、都市伝説にもある、仕事のプロ集団のことだ。
様々な派遣先から依頼を受け、そこで完璧な仕事をこなす。
彼らが名乗るのはコードネームであり、仕事相手──猫は『飼い主』と呼ぶ──に、本名他、素性はいっさい教えてはならない。
そういう決まりなのだと事前に教えられていても、
この完全に日本人顔の『猫』を『セッテ』と呼ぶのは、少し抵抗があるな。
まりあはそんなふうに思った。
いや、日本人でも格好良い、いわゆるイケメンの部類であることは確かだけれども。
「セッテくん、これがこの前おたくの社長に面接してもらった安城ね。
キミの飼い主だよ」
「はい、社長からうかがってます。
よろしゅう、安城さん」
すっと差し出された手を、まりあは素直ににぎった。
セッテの爽やかな笑顔を見て、まりあは少し安心する。
セッテはセッテで、今回の飼い主を見て、
(美人さんやなあ)
と、素直に感心していた。