【コラボ】ブラック・メール
「当たり前です。妊婦が汚いわけじゃない。
女性の一番格好良い姿だという方もいるでしょう。
でも、各個人にはそれぞれの美意識というものがあるんです」
セッテは大きなため息を吐いた。
(めっちゃ強情やんけ……)
いつもは大人しそうな顔をしているのに、こんな時に限って、何故一歩も退かないんだろう。
「……もちろん、甲斐さまはお子様がお生まれになるのを楽しみにしていらっしゃいます。
なるべく負担をかけないように、ドレスも変えて。
本当はプリンセスラインがご希望だったのに、お腹をしめつけるから、あきらめたんです」
「…………」
「だから、これ以上、『あきらめる』のは悲しいじゃないですか。
一生に一度の晴れ舞台なのに」
まりあはまっすぐに、セッテを見つめた。
セッテは何も言い返せなかった。