貴方のいる母校【TABOO】
貴方のいる母校
1月の中頃、私は母校のグラウンドに立っていた。
私の通っていた小学校は山の上にあって、金網の向こうには小さくなった町並みが見える。
ここからの景色を眺めるのが好きだった、あの頃の私。
「よっ、またここに居たのか」
声をかけられて振り向くと、少し寒そうな顔をした彼が立っていた。
「お前、昔っからここ好きだよな」
「……よく覚えてたね、そんな事」
「まぁな。俺、昔はお前が好きだったしなー」
彼は軽い口調で、そんな事を言ってみせる。
「どうだか」
私は疑いの目を向けながら笑った。
大学で都会に出た彼は小学校教諭となり、母校へと戻ってきている。
「まさかお前が地元出ちまうとは思わなかった」
そう、私は大学卒業後に地元を出て都会での一人暮らし。
長く付き合っている彼氏はいるけど、結婚の話はなかなか出ない。
「だって、この町つまんなかったんだもん」
貴方がここを出たから。もう戻って来ないと思っていたから。
「俺は楽しいよ、この町が」
「……物好き」
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