叶う恋はこの世になくて...
私と翔はこの日を境に急速に距離を縮めていった。
私の学校では1年間班ごとに分かれていろいろな活動をしていく。
その班も私と翔は一緒になった。
お互いの呼び名も藍未、渡瀬と呼ぶようになった。
渡瀬のことを翔と呼ぶ人は少ない。
というかむしろいない。
小学生のときからそうらしい。
「ねぇ、翔って呼ばれないの?」
ためしに聞いてみた。
「翔って呼んでいいのは、彼女だけなの!」
と、返ってきた。
「あ、だから今誰も翔って呼んでないんだ。」
「うるせー。」
つくづく翔の発想は笑わせてくれる。
そして、香菜もこまめに私のクラスへ来るようになった。
私の話していて隙を見て渡瀬に私が話を振ったり、香菜が話を振ったりする。
少しでも会話ができることに香菜はすごく嬉しそうだ。
私と香菜と舞加、そして一応翔もバスケ部だ。
男子バスケ部と女子バスケ部の交流はほとんどないため、
私は男バスの人たちとほとんど会話をしてこなかった。
翔と仲良くなってからは少しはするようになった。
香菜は部活の合間合間に翔のことが気になる様子だった。
「藍未、ありがとうね。」
「え?」
「藍未がいたから、香菜渡瀬と話しできるようになったの。
ほんとうにありがとう。」
そういって香菜は笑った。
恋する女の子は本当にかわいいな。
そう感じた。