ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-
この先ずっと、陽平への想いは、揺らがない。
なんて、断言はできないかもしれない。
なお、迷いもするだろう。
時には、後悔だって、するかもしれない。
だけども。
この人と生きていくのを決意した以上は、何が起きても、乗り越えていくしかない。
また電話するから、と言って杏子との通話を終える。
それと同時に。
陽平がうなじにキスを落とす。
くすぐったい。
でも、もっとほしくなる。
鏡の中でねだってみたら、「バカか」と私の頭を軽く小突きながら。
今度は唇にくれた。
「行くぞ」
「あ、ちょっと待って」
「何やってんだよ」
陽平は完全にあきれ返っている。
気の長くない陽平を尻目に、ドレッサーの傍らの、貝殻の形をしたアクセサリートレイ上のピアスを手にとる。
淡いピンクが、耳たぶを控えめに綾なす。
春にはまだほんの少し遠いけど、可憐な桜の花が咲く。
このピアスを誰からプレゼントされたのか、陽平は知らない。
そもそも、プレゼントだということも知らない。
たとえ、どうしたのかと訊かれても、決して教えることはないだろう。
そう、私には。
忘れえぬ恋が、ある。
ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-【完】