ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-

2年になって、体育祭実行委員を引き受けるはめになったのだ。

立候補しようと誰も挙手しようとすらしなくて、ほとほと困り果てた末。

担任とクラス全員でジャンケンをして、負けたら応じるという、今をもってしてもめちゃくちゃな決め方に至った。


結果、見事なまでにストレート負けを期してしまった私は、嫌々ながらも引き受けるしかなく。

その体育祭実行委員の打ちあわせで集まった初回。

同じく実行委員として、彼も現れた。


クラスが一緒になったことはなかったし、帰宅部だった私は彼の存在など知るよしもない。

日によく焼けているけど、運動部系のクラブに所属しているんだろう、と思うくらいで。

興味も関心も寄せることはなく、特に惹きつけられるものはなかった。

打ちあわせ後すぐに行われたメンバーの自己紹介で、彼の名前を知ったのだ。


隣の席に座っていたわけではなかったから、打ちあわせ中はひと言も会話を交わすことはなく。

今後のスケジュールや、クラスの個人がどの競技種目に参戦するのかを、次回までに決めておくことを確認すると。

初回ということもあって、スムーズに事が運んで解散となった。


けど、打ちあわせ中に受信していた杏子からのメールを返信していて、教室をあとにするのが出遅れた。

見渡せば、教室内にはもう誰も残っていない。

大急ぎで荷物をまとめて昇降口に向かうと、そこに彼がいた。



「お疲れさま」



上靴からスニーカーに履き替えながら、私が実行委員だったことを彼も記憶してくれていたのか、ごく自然にそう声をかけてきた。

さっきの委員会で会ったばかり。

私に挨拶しているのか、いまいち確信が持てなかった私は、返事をするのが遅れた。



「……お疲れさまです」



あたりを見回して、誰もいないことを確認してようやく挨拶を返すというありさまだった。



「面白いね」



彼がおかしそうに笑う。



「今、帰りだよね?」

「はい」



委員で一緒とはいえ、今まであまりしゃべったことのない男子と一緒にいるのは妙に緊張する。

靴箱からローファーを出している間に帰ってくれたらいいのに。

なのに、履き替えている間も彼はまだそこにいた。

正門に向かって歩きだすと、彼が追ってきた。



「ちょっと待ってって」

< 11 / 103 >

この作品をシェア

pagetop