ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-

いきなり同窓会へと話題が移って、どうしてそのことを知ったのか見当がつかず。

頓狂な声をあげる。


マグカップから顔を上げると、陽平がハガキを手にしてひらひらと振っている。

ローテーブルに置きっぱなしにしていたのに気がついたらしい。

出欠を決めかねて、まだどちらにも丸をつけられないまま、放置していた。



「行ってこいよ」



私の顔を見据えながら告げられて、え、と愕然と見返す。

マグカップからのぼる白い湯気が、吐息で揺れた。


本当に行ってもいいんだろうか。

私自身がまだ迷っているというのに。



「反対じゃなくて?」

「なんで反対する理由があるんだよ」



陽平はあきれたように私を見る。

行くのが当たり前と言いたげな表情だ。

行くな、と反対されても困るけど、こうも推し進められると、なぜかかえって拍子抜けする。


過去にしてきた恋愛を陽平に話したことはない。

避けてきたつもりはない。

けど、自らぺらぺらとしゃべる必要も特には感じなかった。


たぶん、その同窓会の予定されている高校時代に、元彼がいたとは予想がついていないのかもしれない。

かといって、元彼のひとりもいないようなわびしい恋愛をしてきた、とも考えていないだろう。

どこで出逢い、どんな恋愛をしてきたかなんて、詮索するつもりはもとよりないのだ。


関心もないんだろう。

過去は、過去でしかない。

今だけで、それでいいという考えなのだ。



「俺の行ってた高校も去年だったかな、あったよ」

「ほんと?」

「ああ、けっこう楽しかったぜ」

「そう。でも」



言葉を区切る。

マグカップに視線を落とす。


逡巡している。

行ってもいいのかどうか。

再会を、恐れている。

会いたいのか、わからない。

どんな顔で会えばいいのか、わからない。



「何?」



言いかけて口をつぐんだ私と、怪訝そうに見る陽平の目が重なる。



「なんでもない」



打ち消すようにかぶりを振る。

陽平に打ち明けるつもりでいたんだろうか。

とっくに過ぎ去った過去の恋愛談なのに。

今さら伝えたところで、どうにかなるわけでもないのに。

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