ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-
notice 03 誘い
白熱した試合がくり広げられている。
青と黒のストライプが、私の高校のサッカー部のユニフォームだ。
相手校は袖ぐりと襟ぐりに白いラインが入っているけど、それ以外は赤一色というユニフォームで。
秋空の下、青と赤の対比がきれいだな、と関係ないことをつい考える。
声のかぎりに声援を送る。
頑張れ。
宏之、頑張れ。
いつの間にか、両手は前で祈りを捧げるように組んでいる。
試合はすでにロスタイムに入っている。
2対2。
2点とも宏之がゴールを決めた。
前半36分と、後半42分のことだった。
目を瞠るほど、鮮やかなシュートだった。
ハットトリックを起こすのは、本気だということを今さらながら、実感する。
宏之は本当に私とキスをするつもりでいる。
だったら、宏之の想いを受けて、私は勝利を信じて祈るしかない。
ストライプのユニフォームからストライプのユニフォームへ。
ボールを丁寧に確実につないでいく。
ゴール手前。
宏之にパスが渡る。
ドリブルでタイミングを見計らって、射抜くようにキーパーの後方のネットを見据えると。
右足から力強く蹴りだす。
行けた!
手ごたえはあっただろう。
誰もが追加点を確信する。
だけれど。
ボールはわずかに左にそれて。
ポールをかすめてバウンドすると、フィールド外にころころ転がっていく。
「……そんな」
すぐに試合が再開されるも、今度はなかなかボールを奪うことができない。
相手校のリードに持ちこまれる。
あれよあれよという間に、神業のごとく3点目を追加される。
どうしても、とり返さなければ。
イレブンたちに焦燥が広がって、瞬く間にふくれあがっていくのを感じる。
だけど、その焦りが仇となったのか、うまくパスをつなげられない。
時間がない。