ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-
「あんたの彼って、あんたより年上よね?」
突然の話題に意味がわからないまま、曖昧にうなずく。
「旦那の先輩で、2こ上だから……」
杏子と旦那さんは同い歳だ。
陽平と杏子の旦那さんは、大学の先輩と後輩という関係だ。
そのことを知ったのは、出会った時だった。
おめでとう、と杏子に祝福の言葉を述べに行ったら、陽平もたまたまいて。
その場のノリで、杏子の旦那さんが仲介役として紹介してくれたのだ。
もちろん、その時は陽平と連絡先を交換しあい、つきあいに発展するとは、つゆにも思うことはなく。
「今年、30か」
「それが……何?」
「30近くなって、なんだか異様な焦りとか、なんとかしなきゃ、とか思うこと、多くなってると思うんだけどさ」
言い返せない。
図星だ。
結婚を、焦っている。
「それって、男性のほうが切実らしいよ」
「……嘘」
「女よりもいろいろ責任感じるからじゃないの」
陽平も、なんだろうか。
いや、私以上に陽平が焦っているというんだろうか。
外見上は安穏と構えているように見えるのに。
にわかには信じきれない。
前に結婚の話を向けた時、陽平は明らかに機嫌を損ねたじゃないか。
あれはなんだったというのだ。
結婚したいのに。
その相手は陽平だといいと思っているのに。
また、結婚について話しあう機会を設けるのを恐れているなんて、なんだか滑稽だ。
乾いた笑いが込みあげてきそうになって。
ホットコーヒーでごまかした。