ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-
notice 04 憂い
思わず硬直してしまった身体から、ためらいが伝わったんだろう。
宏之の舌は気づかうように、だけども、口内を執拗に攻め立てる。
宏之に元カノはいない。
初めての彼女が、私だ。
私も、初めてで。
お互い、初めて同士。
決して慣れているわけではないんだろう。
ぎこちなくて、探りを入れながら口内で惑う舌が、かえって安心感を与えてくれる。
くすぶっていた不安感は、どこかに行ってしまった。
ようやく唇が離れると、息があがってしまっている。
情けない。
キスだけでこんなにも体力を消耗するなんて、思いもしなかった。
はあはあと弾む呼吸を整えようと、多くの酸素を肺に送りこむよう、深呼吸をくり返す。
なのに。
私に構うことなく、首筋にキスが落とされる。
悲鳴とも、驚嘆ともつかない、変な声が私の口から漏れた。
吐息のせいか、少しくすぐったい。
笑いをこらえようとしていると、いつの間にかブレザーの前ボタンが外され、宏之のあいていた右手がシャツの上から胸を押さえた。
「俺さ」
宏之の、私の髪の毛に押しつけられてくぐもった声が、聞こえる。
「何?」
「優しくできないかも」
初めてだから。
低いささやきは、詫びるようだ。
いいよ。
返事の代わりに、首を縦に振る。
けど言葉とは裏腹に、たっぷりと時間をかけて丁寧に愛撫してくれた。
身体の隅々まで抜かりはない。
じっとりと汗ばんだ腕の中は、床が味気ないカーペットだとしても、十分に色気を孕む。
うまく応えられなかったら、どうしよう。
頭の隅で消えずにいたそんな心配は、まったくの無用で。
炎天下のアイスクリームが溶けだすように、宏之の熱でとろとろに溶かされていく。
やっとひとつにつながった時。
痛みなんて吹き飛ぶくらい、歓喜と快楽が怒涛のように全身を襲ってきて。
そして。
この上ない充足感に包まれていた。