ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-
何年、友人をやっているというんだろう。
そんなのは百も承知だったはずなのに。
最初から心配する必要も、なかったのに。
憂える時間があるなら、どうすれば先へ進めるのかを考えなくちゃ、時間がもったいない。
和田梓の幸せそうな姿を目撃してしまったせいで、落ちこみかけたりもしたけど。
落ちこんでいる場合ではない。
バッグとともにテーブルの足元のカゴに置いているプレゼントは、陽平に渡すためにスタンバイしているから。
まずは、24日に渡してから。
その時に何かの結論が出るかもしれない。
出ないかもしれない。
それはそれでいい。
結論を出さないこともまた、ひとつの結論かもしれないから。
「そうそう、あんたに報告しなきゃいけないことがあるんだった」
「報告?」
「そ」
片頬を不敵に歪ませてみせた杏子に、なぜか鼓動が急速に速まっていく。
なんの報告があるというんだろう。
第二子を妊娠していて、その報告なら、アルコールを飲むわけはないだろう。
妊娠すれば、胎児への影響を考慮して摂取するものが制限されるのは、この年齢になれば知っていて当然の話だ。
杏子は妙にゆっくりとビーフシチューを咀嚼する。
その味を噛みしめるように口の中で転がしているのを、真正面に見やる。
もったいをつける空白の合間に思案してみるも、皆目見当がつかない。
小首をかしげた時。
唇の回りについたシチューを、手にとった紙ナプキンで丁寧に拭った杏子が、こちらをじっと据えて。
楽しげに笑みさえ浮かべながら。
鼻歌でも口ずさむように、軽い調子で放った。
「同窓会、外村くん来るって」