ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-
「一緒に、住んでほしい」
力強い口調だ。
まっすぐで、誠実で。
その瞳に真剣な光が宿っている。
息を飲んで、陽平を見つめ返す。
「改めて言おう」
真正面から私を見据えて、優しげに微笑む。
「俺と、結婚してほしい」
待ち望んでいた言葉。
何よりも欲していた言葉。
受けとめて、胸の奥にゆっくりと浸透していく。
何か、答えなきゃいけないのに。
何も言葉が思い浮かばない。
答えはすでに決まっている。
決まっているのに。
この状況を把握するのに、精いっぱいで。
陽平をただ見返すしかできなくて。
肩が。
指が。
唇が。
胸が。
震える。
ふと。
温かいものが、頬を濡らす。
ひと筋の、しずく。
決壊した涙腺は、もう止められようがない。
あとからあとから溢れては、頬を伝っていく。
片手で涙を拭う私に、穏やかに問いかけられる。
「結婚、してくれるね?」