ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-
notice 06 誓い

ようやく首を縦に下ろす。

陽平の言葉は胸の奥にまで染みわたっているというのに、まだ信じられない。

それでも、意思表示をしなきゃと思い、こくこくとうなずく。

だけど、うなずくしかできない。



陽平は少しかがむと、小ぶりの紙袋をテーブルに置く。

深みのある真紅に、目立つゴールドの優美なブランドロゴ。


待ちあわせてここに到着した頃には、手にしていたのはビジネスバッグのみ。

そんなものは持っていなかったはずだ。

食事が終わってデザートが供されるまでの間に、私がメイク直しに立った隙を狙って、準備したんだろう。



ほがらかに笑いながら、陽平は紙袋から重厚そうな四角く赤い箱をとりだす。

きれいにかけられている同色のリボンをほどいて、ケースを開けて私に見せる。


鎮座しているのは、プラチナの指輪だった。

ひと粒ダイヤがあしらわれただけの、シンプルなデザインだ。

天井に吊りさげられた豪奢なシャンデリアに反射して、ブリリアントカットされたダイヤがひと際輝きを放つ。



「手、出して」



言われるがまま、片手を差しだす。



「そっちじゃないよ、左手だよ」



気が動転しているらしい。

慌てて左手に替える。


指輪を手にして、おもむろに私の左手をとると。

ためらうそぶりを一瞬も見せることなく、薬指にするするとすべらせていく。



サイズは、ぴったりだ。




つきあって間もない頃に、26回目の誕生日を迎えた。


プレゼント、何かほしいものあるか、と訊かれ。

指輪、と即答していた。

サイズはその時に教えていた。


結婚を意識して答えたわけじゃない。

彼氏持ちをアピールするために、左手の薬指を彩る証拠となるものがほしかったのだ。

会社の同僚に頻繁に誘われる合コンに、辟易しかけていた頃でもあった。

社会人になってすぐの頃なら、毎回のように参加していた。

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