ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-
けれど20代もなかばを過ぎ、参加メンバーの顔ぶれを改めて見回してみた時。
周りの女性陣は自分よりも若い子ばかりだった。
私は、彼女たちの引き立て役でしかない。
こんなところにいてはいけない。
断る材料がほしい。
強くそう思った。
だけど、陽平がプレゼントしてくれたのは、ホワイトゴールドのブレスレットだった。
ピンクトルマリンの、小さなフラワーモチーフがついているデザインだ。
ケースを開けて、目を見開いた。
驚倒するしかなく、唖然と見返した。
もちろん、陽平と出会った時には宏之からもらったブレスレットは、身につけられなくなってずいぶんあとのことだ。
元彼にブレスレットをもらった経験があることなど、話したことはない。
陽平は何も知らずに選んだに違いないけど。
もしかしたら、陽平と宏之が似たタイプだったから、好きになったのかもしれない。
そう思うと、自嘲めいた笑みがこぼれた。
左手の薬指を眺める。
切望していたものを、ついに手に入れた。
ダイヤの燦然たるきらめきは、今まで物足りず埋められずにいた心を、そっと満たしていくような気がした。
「ねえ」
隣を歩く陽平に声をかける。
鼻歌をハミングしていた陽平は、ん? と首だけで見返る。
陽気になる陽平は珍しい。
プロポーズするという、一大決心とも呼べる重圧からようやく解放されたのだ。
浮かれてもおかしくない状態なんだろう。
陽平の紡ぐ鼻歌は、夜風に流れていく。
「前に私と結婚のテレビを見てたら、あのあと陽平、不機嫌になったよね?」
そうだったかなあ、と陽平は首をかしげる。
そうだったの、覚えてるから、と詰め寄っても、なおも怪訝そうに眉根をひそめる。
演技でもなく、本当に覚えていないんだろう。
「結婚に興味なさげだった陽平が、なんで踏みきったのか、気になるんだけど」