ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-
日曜日、高校時代の友人の杏子(きょうこ)と会うことになった。
週末に杏子から電話がかかってきた。
同窓会の案内ハガキが彼女のもとにも届いて、会おうということになったのだ。
陽平は前日からちょうど出張に出ていて、断る理由などなかった。
駅前にあるカフェは休日のためかほとんどの席が埋まっていて、そこかしこから陽気な笑い声があがる。
「ほんと久しぶりだよね」
お互いにホットコーヒーを注文して、店員さんが立ち去ったのを確認してから、杏子は以前と変わらない笑顔を交えながら話しだす。
「いつ以来だっけ?」
「たぶん、杏子の結婚式以来じゃないかな」
そんなに? と杏子は大仰に驚愕してみせる。
杏子は2年前に結婚した。
陽平と出会ったのは、その結婚式での二次会だった。
いってみれば、杏子は私と陽平を出会わせるきっかけをつくってくれた張本人だ。
結婚するまでは、高校卒業後もふたりでごはんを食べに行くほどの仲だったのに。
それが結婚したとたん、ぱったりと途絶えた。
「同窓会の案内、来たでしょ?」
「うん、杏子のところもよね。行くの?」
「私、行けないわ」
「え、そうなの?」
参加するとばかり決めてかかっていたわけじゃない。
だけど、あまりにもあっさりと告げられて一瞬だけ唖然とするも、すぐに思い至る。
杏子のところって、そういえば。
「行きたかったんだけどね、同窓会」
「都合悪いの?」
「子どもがまだ小さいでしょ。だから、おばあちゃんちに預けたかったんだけど、前日から1泊2日で旅行に行くんだって」
やっぱり、子どもが原因か。
結婚直後に妊娠が発覚し。
その後、無事に出産した杏子の子どもは、まだ2歳にも満たないはずだ。
今は特に目が離せない時期だろう。