ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-
notice 07 集い

同窓会の案内状には、片隅に会場となるホテルへの、簡易な地図も一緒に載せられていた。

老舗でもあるそのホテルは、私鉄や地下鉄が絡みあう主要駅から徒歩圏内に立地している。

ランドマーク的な存在で、近辺でショッピングをすることもあって歩きなれているので、迷うことなくたどりついた。



背筋を伸ばして、正面から堂々と入っていく。

エントランスをくぐると、広々としたスペースが現れた。

間接照明が多用され、全体的にシックで落ち着いた印象だ。

天井は高く、一部が吹き抜けになっているところもあり、開放感がある。


フロントは左手にあった。

結婚式でも行われるのか、招待客らしい華やかに着飾った人が、フロントスタッフに話しかけている。

フロント前のメインロビーで、くつろぐように腰かけている人もいる。




同窓会は、4階の宴会場で行われる。

案内に沿ってラウンジ前の大理石の通路を進んでいくと、エレベーターが2基ずつ向かいあっていた。

どれも利用中のようで、降りてくるまで待つしかない。



壁面が鏡になっているんだろう、そこに私の全身が映しだされる。


前ボタンを止めていないコートの間からのぞくワインレッドのワンピース。

すっきりとハーフアップにまとめあげたヘアスタイル。

あらわになったさみしげな耳たぶには、桜色のピアス。


宏之からもらったピアスだ。

初めて身につけた。

小ぶりのデザインは、ピアスの位置のせいなのか、今にも花びらがひらひらと舞っていきそうだ。


このピアスを、宏之はどんな想いで選んだんだろう。

あの時は嬉しさと気恥ずかしさで訊けなかったけど。

今なら、気軽に訊けそうな気がする。



待っている間に、宏之がひょっこりとその姿を現してくれたらいいのに。

再会がエレベーターの前でも、どこでも構わない。

宏之も同窓会に参加する以上、このホテルのどこかで再会するのは、変わらない。

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