ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-
わだかまりを残したまま別れた最後の日。
あの日に戻って、やり直したい。
何度も何度も悔やんだ。
そのくせ、自分からは動けなくて、宏之からの連絡をひたすらに待った。
携帯を握ったまま眠りについたことは、数えしれず。
朝になれば、着信もメールの受信もないことを確認して。
意気消沈しては、また涙をこぼした。
そんな状態をひと月ほど続けた。
食事もろくに喉を通らず、痩せていくばかりで。
杏子はそんな私をあきれ返りながらも、あっちこっちに連れだしてくれたけど。
いっこうに着信を告げる気配のない携帯が、恨めしかった。
ようやく、こんなことではいけないと思い直し。
新しく彼氏ができたと同時に、宏之の連絡先を消去した。
宏之も、何かのきっかけで私の番号を消去したんだろう。
ここから何かを始められるだろうか。
もちろん、彼氏としてじゃない。
男友だちとして、気の置けない友人のひとりとして、やっていけるだろうか。
新規に登録された宏之の番号は、どうにも見慣れなくて。
それがなんだか、これからの新しい関係を象徴しているように映った。
「続きまして」
幹事の子がまたマイクを手にする。
「写真撮影を行います。全体写真ですので、皆さま、どうぞ前方へとお集まりください」
周りの人たちがぞろぞろと移動を始める。
恩師を最前列の中央に据えて、その周りを元生徒が固めるらしい。
「行こ、宏之」
つられるように前へ進み寄ろうとするも、なぜか、宏之はその場に立ち尽くしたままだ。
うつむきぎみに目を伏せ、何やら考えこんでいるようだ。
「どうしたの? 行こうよ」
私の二度目の呼び声に、宏之ははっとしたように顔を上げる。
それでもなお思案するようなそぶりを見せたあと。
おもむろに口を開く。
「写真撮影終わったら、ふたりで抜けない?」