あなたがいたから
木下が出ていったのを確認した五十部は、


「もう、嫌だ。あの先生」


と、弱音を吐いていた。


そんな五十部を見ながら未来は、お気の毒さまにと、他人事のように思いながら黙々と帰りの準備をしていた。



まだ、騒がしい教室から早く出ていきたいと思っていたからだ。


帰りの準備が終わると未来はさっさと帰ろうと教室のドアに向かった。


すると智佳が話し掛けてきた。


「未来ちゃん。途中まで一緒に帰ろう。
そういえば、未来ちゃんはどうやってここまで来てるの?
北山市って隣の市だけど、ここの市、無駄に大きいからここまで来るのに遠いよね?」


「そうだけど……それがどうかした?」


早く家に帰りたい未来は面倒臭そうに答えた。



それでも、智佳は負けじと声をかけてくる。


「どうやって来てるの?
お互い遠い者同士、一緒に帰ろうよ。」


「どうでもいいけど、あんたさっきから呼ばれてる。」


「えっ?」


智佳は未来に言われた通りに後ろを振り向くと、数名の女生徒が智佳の名前を呼んでいた。



「それじゃあ、そういうわけだから。」


未来は軽く手を振ると教室から出ていった。

智佳の


「ちょっと、未来ちゃん!」


という、叫びを背中で聞きながら……。


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