ひな*恋
「すいません、お願いします」



「あっ、はぁい!」



久保店長と小山さんのやりとりに気を取られてお客さんが来ていた事に気付かなかった私は、慌ててレジに着いた。



「すみませんでしたっ、いらっしゃいませ。
…あ、こんばんは!」



「こんばんは」



惣菜のパックをいくつか持ってレジに来ていたお客さんは、いつも来てくれる常連さんだった。



いや、毎日来ている常連さんは他にもいるんだけどね。

ただ惣菜を買っていく人もいれば、中にはつい一言二言お話をしてしまうお客さんもいるわけだ。



「お疲れ様です。
お仕事、今日も遅くまであったんですね」



カウンターに置かれた惣菜のパックのバーコードを私は、話しながら1つ1つリーダーに通す。



「えぇ、毎日残業三昧ですよ。
だから仕事も終えて晩飯をゆっくり選ぶこの時間が、一番ホッとします」



そう返したこのお客さんは、中年の名に片足突っ込みかけたスーツ姿のサラリーマン風の男性。


毎日仕事を終えては、こうやってうちで惣菜を買って帰るのが日課みたいだけど。



いい年して毎日おかずを買うって事は、奥さんもいない独り身なのかな。

…なんて、心の中で勝手な事を思っちゃったりして。





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