ひな*恋
「わぁ。
ハンバーグのタネ、結構多すぎたかなぁ」



ボウルいっぱいにこねたミンチ肉が、炒めた玉ねぎやパン粉も入れて更にボリュームアップしちゃっている。


そもそもうちの店で、いつも大量の惣菜を買って行ってたわけなんだから、それに見合った量を作らなきゃいけないかなと思ってたんだけどね。




「大丈夫だよ。
後からまだ食べる人いるから、多めに作ってラップでもしといて」



“後からまだ食べる人いるから”…?



実は前々から気になっていた話。

ご飯を作ってくれる人はいなさそうだし、片付けや掃除だってロクにしちゃいない様子のこの家。


さっきは『うちの親、夜まで帰って来ねーもん』なんて言ってたわけだから、慎吾くん1人で住んでるってわけじゃあないのはわかる。




「…ねぇ、慎吾くん。
慎吾くんのご両親って、毎日夜遅くまでお仕事してるの?」



相変わらず私が台所でご飯を作っている間は、向こうのリビングのソファでゲームをしている。

そんな彼に、私はずっと気になっていたその事について、そっと訊いてみた。



「んー?
てゆーか、うち両親じゃなくてオヤジしかいないよ?
だから、余っても全然いいからねー」



…あぁ、やっぱり。

毎日仕事が忙しいお父さんと息子の男2人なら、掃除なんてできないだろうし、ご飯だって作れないんだろうなと納得した。



…という事は、慎吾くんは毎日1人でご飯食べてるって事なのかなぁ。


毎日毎日、買った店の惣菜をおかずに…。





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