ひな*恋
「あの実は、この口紅お母さんが誕生日プレゼントで買ってくれたものなんです。
それで…」



別に今更オシャレをしようとか、デートだからとか、そんな理由で化粧をしてきたとかは思われなくない。

子どもみたいな顔してる奴が化粧なんてしても、まるで無理やり大人になりたくて背伸びしてるだけみたいに思われそうで、逆に虚しいだけだもんね。



「あらっ ヒナちゃん、今日誕生日なの?
それはおめでとう!
一体いくつになったんだっけ」




…あぁ、しまった。

そんなつもりで言ったわけじゃないのに、でも考えてみれば当たり前な返しだなと後から気付く。


自分の年を改めて言う瞬間が、一番ツラい。


その度に、何度「えっ、まだ未成年かと思った!」と言われた事か…。




「…29に、なりましたよ」



「まぁ、まだ29!?
若いっていいわねぇ~」



「…………」




ここのスタッフの人たちは、入社した時から私がただの童顔なのを知っているから、今更驚いたりはしない。


だけど…



「小山っ
お前なぁ、自分と比べりゃヒナ坊は若いに決まっとるだろうが!」



…とまぁ久保店長が言う通り、いくつになっても私が最年少なんだから、小山さんの反応は当たり前なんですよ。



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