ひな*恋
「はい、ちょうど頂きます。
レシートのお返しでーす」



「ありがとう」



会計を済ませると、惣菜をレジ袋に包みお客さんに手渡した。


いつもはちょっと大きな袋だけど、今日は1つだけだから一番小さいレジ袋だね。




「お気を付けて、お帰り下さいね。
ありがとうございまーす」



だけどもし本当に本当の独り身になっちゃったんだとしたら、何だかかわいそうだなぁ。

こんな優しそうな人なのに、プライベートじゃいろいろ苦労してるのかもしれない。


とりあえず他に理由が思い浮かばないんだけど、でもどうかこのお客さんが家に帰って、1人ぼっちで鶏カツを食べなきゃいいな…。




「…………あの」



「ぁ、は はいっ」



うわわっ
まさか今の私の思考が読まれちゃったとか、ないよねっ

勝手に独り身なんて思っちゃって、ごめんなさーい!!




「…もうすぐ、帰られるんですよね」



「え?
…あー…そうですね」




厨房にある時計を見上げてみると、もうすく閉店時間だ。


他のスタッフは掃除をしていて、閉店と共にすぐあがれるようになっている。


陳列棚にはまだまだ惣菜は残っているけど、今日も私の晩ご飯はあの中のどれかだな。


…とか、ぼんやり考えていた。




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