ひな*恋
「あー…あのっ」



「はい?」



レジ袋を持ったイチゴバラさんが、私の呼び止めに耳を向けて応じてくれた。



しばらく顔を見せなかった時は、イチゴバラさんの子どもさんが代わりにお使いに来ていたって聞いた。

だとするならば最低でも2人暮らしだよね?


でも今こうしてイチゴバラさん本人が買いに来てくれているならば、子どもさんは来てないわけだ。

なのに、今日買った惣菜は筑前煮1つだけ。



「…イチゴバラさんの晩ご飯って…」



他人の事なんだから別に気にする必要ないのは十分わかってるんだけど。


「今日は筑前煮1つだけしか食べないん…ですか?」



でもやっぱりムズムズ気になって、仕方ないのよぉ!!


余計なお世話かもしれないけど、別に誰にも言わないからこっそり教えてくれないかなぁ?なぁんて。




「え?あははっ
そりゃ、そう思っちゃいますよね」



だけど何だか私が変な心配をしていたと勘違いしたイチゴバラさんは、笑いながら顔の前で手を振った。



「最近は、子どもがご飯のおかずを用意してくれてるんです。
だから、これしか食べないわけじゃないんですよ」



「な なるほどー!」



まぁ、おかずが筑前煮1つだけなんておかしいのはわかってた話だけど。



だけど…だったら1つ、また気になる事がある。



「じゃあどうして、毎日ここで1つ買ってくれるんですか…?」




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