ひな*恋
「…あの、妹尾さん。
それじゃあ僕は、この辺で失礼しますね」



「えっ、あ…っ」



元クラスメイトの彼女と丁度会話が途切れた所で、イチゴバラさんはそう言ってペコリ私に頭を下げた。



「あの、ごめんなさい…っ」


「いえいえ、折角お友だちに会えたのでしょう?ゆっくりお話されたらいいですよ。
僕は、今から頑張らなきゃなので。
それじゃあ、ありがとうございました」



「あ……」



ニコリ優しい笑みを見せたイチゴバラさんは隣の彼女にも軽く会釈をすると、レジ袋を両手に抱えてスーパーの自動ドアを出て行った。


…悪い事、しちゃったかな。

却って気を遣わせちゃったのかもしれない。



「…………………っ」



ガッカリ…ではないんだけど、ちょっぴりやり残した感を感じながら、私はイチゴバラさんの背中を黙って見送ってしまった。





「…てゆーか。
妹尾さん、今の誰?
お父さんじゃないよねぇ」



「お お父…っ!?
違う違う!
えっと…ちょっとしたお知り合いなのっ」



とんだ誤解をされかけてしまった。


本人に聞かれなかったからよかったけど、まさか同級生にイチゴバラさんをお父さん扱いされるなんてぇ!


いくら私が年相応に見えないからって、私とイチゴバラさんが並んでたら親子に見えちゃうの??


それってなんか、ショックかも…。






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