ひな*恋
「はい、お待たせしました!
ご用意できましたー」



「ありがとう」



レジ袋に入れた焼きそばをイチゴバラさんに向けると、彼はそれをいつもの優しい笑みを見せながら受け取った。



本当なら最近は家で息子さんがご飯を用意して待ってくれてるらしいのに、今日もわざわざうちに来てくれる。

なぜなら、それは…



『会いたかったんです。
…その、妹尾さんに』



つい一昨日言われた言葉を思い出し、ドキンとして身体に変な緊張が走った。



や やだっ
今急に意識しちゃったら、イチゴバラさんに気付かれちゃう…っ!





「…妹尾さん」



「はっ、はいっ!!」



ほらっ
呼ばれただけなのに、返事の声が上擦っちゃったよぉ!

私が変な風に意識してるの、バレちゃうーっ




「よかったら、またこの前と同じ所で待っててもいいですか?
うちも家が同じ方向だし、迷惑でなければまたご一緒したいなと…」



「ぁ………はい」



何だか恥ずかしくてまっすぐに見れず、ゆっくりと首を縦に振りながら答えると。

イチゴバラさんはまた私に、優しい笑顔を見せてくれたの。









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