ひな*恋
出来上がった惣菜をプラスチックパックに入れると、早速夕飯のピークに備えて陳列をした。



いつもなら2列ずつ陳列するサラダが、今日は3列ずつになっちゃったよぉ。


でもこれくらいあれば、閉店1時間前にはまだ残ってくれそうだよね。





「あ」



たった今陳列したばかりのサラダを1つ取り、レジの方へと持ってきたお客さんの影が見えた。


まだ夕飯時には少し早い時間だけど、もちろんそんなお客さんだっていたりするもんだもんね。




「いらっしゃいませ、こんにち…」


「コレと、あとリンゴちょーだい。
一緒にまぜて、リンゴサラダにしたいから」



キュッと口角を上げ、ニコリと営業スマイルをしながらお客さんと向き合った途端、その上げた口角がひきつりそうになった。



「し…っ、し………」



「ヒドいよ、ひなぁ。ケータイの電源切ってるだろ?
うちには来てくれないし、俺お腹空いてんだけど」



そう言ってサラダを置いたカウンターに肘を立てながら顎を乗せ、下から上目遣いに私を見上げて頬を膨らませているのは…



「慎吾くん!」



そっか、この時間に私がここにいる事を慎吾くんは知ってるんだったよぉ。





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