ひな*恋
まだ客足の少ない、午後の16時過ぎ。



今のところ他にお客さんはいないようなのでよかったけれど、明らかにふてくされてる感じの慎吾くんに、どう対応しようかとハラハラした。




「てゆーか、どうして急に来てくれなくなったのさぁ。
逆に心配しちゃったよ?」



「………………っ」



どうしてなんて訊かれても、もとを辿れば慎吾くんが登校日だから家にいないって事を教えてくれなかったからだ。


だけど、結果それ自体は関係ない。



ただ私と慎吾くんはどの道、ただの店員とお客さんの関係に過ぎないのだ。


それ以上も、以下もない。




「ねっ、明日は来てくれるよね?
そうだ、またランチにチーズトースト焼いてよ。
俺、ひなの作ったもん食べたい」



「………………っ」



『ひなの作ったもん食べたい』

そんな風に言われたら、作ってあげたくなっちゃう。


だけど、そんな事したって仕方ないのよ。



「…あのね、もうダメなんだよ」



「ダメって何が?」



「……………」



慎吾くんにとっては、ほんの軽い気持ちなのかもしれないけど。

でも私の年齢を聞いたら、わかってくれるかな?


私もいい加減、本当に結婚を考えなきゃならない年だもの。

遊び感覚でご飯のお世話をしたり、セフレみたいな真似事はするわけにいかないの。




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