ひな*恋
不本意とは言え、お財布みたいな貴重品を預かる羽目になってしまった。


お会計の際にメガネやら手袋を忘れて帰られて、仕方なくそのまま忘れ物として店で預かる事はあるんだけど。

でもさすがに、明らかに持ち主のわかっている貴重品を忘れ物扱いとして保管するわけにはいかないかも。



「…んもぉっ
こんな貴重品を気軽に他人に預けちゃうなんて、危機感ないんだからぁ」



とりあえず慎吾くんのお財布は私が預かるとして…



――『このサラダのお金、財布から抜いといてねー』



他人のお財布を私に開けさせるのーっ



余所様の冷蔵庫は勝手に開けるものじゃないって言うように、お財布だって勝手に開けていいものじゃないんだからっ!



「…とは言え」



一応商品であるサラダは持って行っちゃったわけだし、レジ処理はしなきゃいけないよねぇ。




「………………っ」



いくらか抵抗はあったものの、とりあえずこれで払ってくれって言われたわけだから…仕方なく、そう仕方なく私は慎吾くんのお財布をそっと開けてみる事にした。





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