ひな*恋
さすが平日。

それからは、パッタリと客足が途絶えてしまった“デリカ popo”



「おい、ヒナ坊。
客が来んぞー」



ちょっと暇を持て余してきた久保店長が、そんな事を私に言う。



「あらやだ。
じゃあ、あたし店頭に出て旗振ってこようかしら?」



「バカったれ。
小山が旗振ったら余計に客が引く」



「んまぁ、久保店長ったら!」




……………………。


いい加減慣れてる夫婦漫才に苦笑いを返すと、私も暇になった厨房に戻り片付けや掃除を手伝った。



だけどまだ20時。

うちの店は、この閉店1時間前に利用するお客さんが案外いるんだから。




「………って、あっ!」



早速レジカウンターにお客さんが現れたのが厨房から見え、私は慌ててレジの方へと駆けって行った。




普段はもっと遅い時間に来るから、まだだろうと思ってたんだけど。



「いらっしゃいませ!
お待ちしていましたよっ」



いつもと同じようにスーツ姿で仕事あがりを物語っているそのお客さんは、私が出て来たのを確認するとパッと優しい笑みを見せてくれたの。



「こんばんは、妹尾さん」



「こんばんは。
…イチゴバラさん!」




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