ひな*恋
「…………………」



「…………………」




家までの道を、まるでお葬式の帰りかってぐらい黙ったまま並んで歩く。



「……………………」



今までは他愛のない話でも、何となく勝手に口から出ちゃってたわけだから会話も途切れる事はなかったのに。


さっきからずっと唇は固く閉まっちゃったまま、代わりに心臓だけがバクバク耳に響いて仕方ないの。



私に話したい事って何?

私を大事に思ってくれてるみたいなイチゴバラさん。

会いたいって言うのは、私にどんな想いが込められているの………?







「…………はぁ。
やっぱり、どう切り出していいかわからないや」



「…イチゴバラさん?」



ずっとお互い黙ったまま歩き続けていた中、突如足を止めて先に沈黙を破ったのはイチゴバラさんだった。



側には車が通るばかりで、歩道を歩く人は私たち以外にはいない。



車のライトが次々と私たちを照らしては通り過ぎて行くんだけど、そんな事も気にならないくらい私たちのまわりには私たちしかいない世界に入り込んでいたの。





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