ひな*恋
「イチゴバラさん、私に話したい事って…」



「…はい……」



緊張しちゃって何も言えなかったんだけど、先にイチゴバラさんが足を止め口を開いてくれたおかげで私もようやく口を開く事ができたの。


だけどドキンドキンと鳴り響く心臓の音だけは止まず、むしろさっきよりも強くなっているのかもしれない。




「…前も言いましたが、妹尾さんは仕事で疲れた僕にホッとできる存在でした。
毎日あなたの笑顔でかけてくれる言葉で、本当に癒されてたんです」



「……そんな…」




――『仕事も終えて晩飯をゆっくり選ぶこの時間が、一番ホッとします』



そんな事を言っていたイチゴバラさんだったけど、それって惣菜を選んでる時の事じゃなくて私の事だったの…?




「初めは感じのいい接客に、気持ちよくお店を利用させてもらっていただけだったんです。
だけどあの日の帰り、妹尾さんを初めて送ってあげた夜――…」



私が初めてイチゴバラさんに送ってもらった日の夜。

それはコンビニの前を通りかかった時、私をナンパしてきたおっさんに声をかけられそうになって怖くて逃げた時の話だ。




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