ひな*恋
ロクなもん入ってないなんて言ってただけあって、本当にもったいないくらいスペースの空いた慎吾くんの家の冷蔵庫内。


飲みかけのジュースに、食べかけの惣菜。

それから、ほんの少しの野菜クズに卵とマヨネーズ。


ちょっと前までは私も料理で利用させてもらってたわけだから、初めて来た時よりかは若干物は入ってるんだけど。



そんな中、ある1つのものに気付いた私は手を伸ばしてそれを取り出した。




「…うちのサラダ。
これ、昨日慎吾くんが買ってくれたものじゃない。どうして食べなかったの?」



透明のプラスチックパックに詰められているサラダには、うちの“デリカ popo”のロゴマークが付いている。

日付を見ても正に昨日のものだし、何より気になったのはそれが未開封で、箸をつけた後がなかった事だ。



つまり、せっかく買ったのに食べなかったって事だよね。




「え?
あぁ、それは俺が買ったものじゃないよ。
だって俺が買った奴は、もう食べちゃったもんね」



「え…?
じゃあ、どうして…」



「オヤジがさ、サラダは2つも買ってきたんだよ。
だから昨日は3つもあってさ、それで1つ余っちゃったわけ」



あぁ、なるほどー…と思いつつも。


という事は、昨日うちの店に慎吾くんのお父さんが来てたって事?


しかも、男の人なのにサラダを2つも…?





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