ひな*恋
それから夜の21時。


閉店直前に来てくれた盆子原さんはいつも通り惣菜をいくつか買ってくれると、そのままデパート裏口で私の仕事上がりを待っててくれた。




「雛子さん」



「…あ、盆子原さん」



私に駆け寄った盆子原さんは、優しい笑みと共にいつものカフェオレをくれた。



「お疲れさまでした。
行きましょうか」



「…はい、ありがとうございます。
…ぁ……っ」



歩き出した盆子原さんは同時に、私の手をギュッと繋いだ。



「め 迷惑…でしたかねっ」



「…っ!
…そんな、事は…」



「…あぁ、よかった。
ありがとう」



一瞬不安そうに眉を寄せた盆子原さんだったけど、安心したらすぐにその表情は和らいだ。



…だけど不安そうになったその顔。

今初めて慎吾くんに似てるって思って、ドキッとした。



母親似の慎吾くんらしいけど、やっぱりそこは盆子原さんの実の息子さんなんだって、改めてリアルに感じちゃったな…。






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