ひな*恋
「…どう、されましたか?
さっきからずっと、不安そうな顔をしている」



「えっ、あ…っ」



顔に出さないように気を付けなきゃって思ってたのに、盆子原さんに心配されてしまった。



「お腹、まだ空きませんよね。
緊張も、しなくていいですよ。先にコーヒーだけ注文して、話でもしましょうか」



「あ、はい…っ」



…よかった。変な風に疑われないで済んだみたい。


だけど、それも時間の問題だよね。
どの道、慎吾くんがここに来たら状況は変わる。


黙って受け入れてくれる?

それともこの場で、お父さんである盆子原さんに本当の事を話しちゃう?

でも、そんな事しちゃったら…





「慎吾…」



「ぇっ」



「…って言うんですよ。
僕の息子の名前です」



「あぁ…」



…なんだぁ。
いきなり慎吾くんの名前が出てきたから、ビックリしちゃった。


そうだよね。
盆子原さんからすれば、私と慎吾くんは今日が初対面だと思ってるもんね。


私もそのつもりで、話を合わせなきゃ。





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