ひな*恋
盆子原さんが会社に向かってから、数分が経過しただろうか。



ようやく少し落ち着いてきた私は、もう一度ベッドで眠っている慎吾くんの側に立ったの。




…これで、もう最後だね。


後は私がいなくなれば、慎吾くんとの関係も終わる。



初めて会った時は、チャラチャラしてて初対面の人に失礼な事を言う奴だなって思っちゃったわよ。



――『その胸に張り付いたTシャツ。男には魅惑的過ぎて困るんだけど?』



――『っ!!?
そ そんなトコ見てたなんてぇ!』




だけどその実態は、とても深い絆で結ばれて家族愛に溢れた家庭の、普通の男の子だったんだよね。





――『ヤッタね。
実はあの雨の日に初めて見た時から、思ってたんだ』



――『…何、を……?』



――『ひなのその魅惑的な胸、触ってみたかったんだ』



――『そん…、ぁ――――…っ』




15歳のクセに28歳のバージンもらっちゃうなんて、なかなかないんだぞっ




「………もぉっ」




これで最後と思ったら、今までの想いが一度に胸の中に蘇ってきた。


それがたまらなく苦しくて、切なくて。



私は…この胸で慎吾くんの顔をギュッと抱きしめたの。








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