ひな*恋
その後も、私は次々来るお客さんの中にアイツがいないかを探しながら待っていた。


中には当然常連のお客さんもいるわけで、すっかりお互いの顔を覚えてる私と目が合うと、ペコリとお辞儀してしまう。


いやいやいや。
休みの日にまで営業スマイルとかしたくないですけどね。

何て言うか、もう身体に染み付いてしまっているんだろうなぁ。





「……………ふぅ」



ポケットからケータイを取り出して時計を見ると、18時40分を過ぎている。


もうすぐ19時だ。





「ヒナ坊、お前何してんだ?」



「久保店長!」



さすがにこれだけ長時間もいれば、おかしいと思ったのだろう。

ガラスで仕切られてるだけの厨房からこちらは丸見えなので、私の姿を見かねて久保店長が直々に声をかけてきた。



「待ち合わせって?
さっきからずっと1人じゃないか」



「あー…はい、実は…」



いくら自分の勤めてる職場であっても、長時間ただ突っ立ってるのは感じ悪いよね。


私は久保店長の方に駆け寄ると、その理由を簡単に説明した。





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