ひな*恋
「あぁ、ヒナちゃんが帰った後すぐだったのよ?
若い男の子でしょ?
傘を受け取りに来たって言うから、返しといたわ」
「ぁ…そう……ですか」
翌日。
出勤して早々、昨日レジをしていた田原さんからそんな報告を受け、私の思考は一瞬止まった。
「さっきまでヒナちゃん待ってたのよって言ったんだけどね。
まさか昨日が休みだったなんて、思わなかったみたいね」
「…はい…私も言わなかったので…。
あの、返しといてくれたようで、ありがとうございました」
「それはいいんだけどね。
何だか…タイミングが悪かったわね。せっかく待ってたのに」
「いえ、返せたんならそれで…いいんです」
別に何かを期待してたわけじゃあない。
ただ雨の日に、たまたまアイツから傘を借りたから返したってだけ。
お礼は一昨日の時に言ったわけだし、別にもう今更言う必要ない…もんね。
これでアイツとは貸し借りゼロ。
全くのタダの他人に戻っただけなのよ。
だけど…
何だろう、スゴく腹が立つような気がするんだけど。