ひな*恋
仕事に入ったばかりの、まだお客さんがあまり来ない時間帯。

今日もいつも通り、私はサラダ作りから始める。



マニュアルで決められている分量と手順で作るのだけど、人気のおかずは毎日作っている。

だからもう何も見なくても、目分量で作れるようになっているわけだ。



私は慣れた手つきで茹でた卵の殻を剥き、ふかしたジャガイモとハムやきゅうりなどの野菜も一緒に大きなボウルに入れ、マヨネーズや調味料なんかで丁寧に和えた。




「そう言えばアイツ…いや、あの傘のお客さんは昨日、何を買って行ったんですか?」



作りながら、隣で炒め物の野菜を切っている田原さんに話しかけた。


誰がどんなものを選んで買って行くなんて、そんなのは下世話な話かもしれないけれど。

常連さんが今日はどんなものを買って行ったかなんて話は、案外うちのスタッフ間では普通に話したりもしている。


まったく、この仕事をしている私たちは、ドンダケ下世話な人間だ。



「あぁ、あの男の子?
えーっとねぇ…唐揚げと焼き肉とハンバーグとフライと…後はそのサラダね」



若い男子だけあって、やっぱり食べるものは肉系ばかりだ。

しかも量も多い。

そして煮物みたいなものは、眼中にすらないんだろうな。


…だけど。



「へぇ…高校生男子でも、サラダなんて好んで食べるんですね」



「そのサラダ」なんて言われ、思わずドキッとしてしまったじゃないか。




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