ひな*恋
お昼に待ち合わせた、本屋さんの前を通りかかった。

後はこの道をまっすぐに行けば、うちのアパートだ。

だからって、さすがに家の前まで送らせる気はない。



「あの、私そろそろこの辺で…」




「あ、ねえねえ。あそこに見える青い屋根の家があるだろ?
あれ、うちん家なんだ」



「え?」



ふいに彼に指差された方を見てみたけれど、確かにある青い屋根の家。


だとすると…以前言ってた通り、この本屋さんからはホントに近いだけじゃなく、うちの家からもスゴく近いんだ!



「な?近いって言ったろ?
じゃ、俺また夜に行くから例のアレ、よろしくね」



「…あ、はい。
て言うか…」



青い屋根…。
割と大きな家みたいだけど、まさか彼は1人暮らしなわけないよねぇ。

でも晩ご飯に毎日うちの店を利用するくらいだから、ご飯を作ってくれる人はいないんだと思うけど…。




――『でも、今日も来る予定なんでしょ?
だったら本人に訊いてみたらいいんじゃない?』




「あの…」



そんな事、知りたいだけのただの余計なお世話かもしれないけれど。

でもどうしても、気になって仕方ないのよ。




「キミの家って、普段ご飯は誰が作ってんの…?」





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