ひな*恋
「あの…」



「あのじゃなくて、シ ン ゴ。
あ、リンゴじゃないよ」



そんな冗談は望んでません!

そうじゃなくて、何で今時の高校生はみんなこうなのかなぁ。



「名字は、何なんですか?
いくら年下相手でも、いきなり下の名前で呼ぶなんて…」



「教えない」



「えぇっ!?」



「だって名字なんて教えたら、名前で呼んでくれないだろ?」




な…っ
何を言ってるんだ、コイツは!

そんなの当たり前じゃないかぁ!




「ほら、呼んでみなよ。
ひ な ちゃん♪」



「………………っ」



出会って日も浅いのに、ましてや友だちでもなんでもないのに。



「ひな、慎吾って呼んでってば」



「…し……っ」




馴れ馴れしい!
…て言うか、むしろ人懐っこいって言うべきかなぁ。

別に、私も嫌なわけじゃないのよ。




「ひな、早く」



「し んご…クン」



ただ私みたいな童顔アラサー女が、高校生男子とそんな関係になる事に違和感を感じてしまっているだけ。




「“クン”ね。
まぁいいや、エラいエラい」



「わわっ」



わざと髪がくしゃくしゃっとなるように私の頭を撫でたコイツ。



そう、別に友だちってわけじゃない。


お互いの名前を知り合っただけの、店員とお客さんなのよ。








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