ひな*恋
陳列棚からお客さんが取って行った商品を、またキレイに並べ直すのも私たちの仕事。


スペースに穴を作らないよう、残り少なくなっても広く薄く並べて見た目を良くするの。



そうしているうち、見覚えのある常連さんの姿がこっちに向かって来ているのが見えた。




(――――あっ
て言うか、あの人っ)



私はすぐに厨房に戻り、後片付けやら掃除をしているスタッフの中から田原さんのもとに向かって駆けつけた。




「ヒナちゃん、どうしたの」



「もうすぐお客さん来るんですけど、レジ代わってもらえませんかっ」



「え?
それは別に構わないんだけど…」



揚げ物なんかで使ったバットやトングを洗っていた田原さんは手を洗って洗剤を落とすと、不思議そうな顔をして私の代わりにレジの方へと出た。



「いらっしゃいませ、こんばんは」




そんな私は向こう側から見えないように隠れながら、そっとレジの様子を覗いた。




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