ひな*恋
その日の夜――




「お疲れ様でした。
お先失礼しまーす」



「お疲れさんヒナ坊、気を付けて帰れよ」



「はぁい」



21時の閉店後にレジ精算をすると、ようやくこの日の仕事も終わった。


今日もまた余った惣菜をスタッフと分け合うと、レジ袋に入れて私は職場を後にしたわけだ。





「うーん、夏の夜風って気持ちいいっ」



21時も過ぎれば、外は真っ暗。

若い女性が歩くにはちょっぴり危ないけど、家も近いし街灯のある道だからそんなに怖くない。




「お腹すいたぁ。
今日は小山さんの炊いたお煮しめをもらっちゃった。早く食べたいなぁ」



開店中の飲食店やコンビニなんかの明かりも頼りに夜道を歩き、私は半ば急ぎ足で家に向かっていた。

お母さんも起きて待っててくれてるし、心配かけたくないからね。


それに、あんまり寝る直前に食べると太るだけだから晩ご飯は早めに……




「――――…っ!!」



帰る道をまっすぐ歩いている向かいにいた人物に、私はドキリとして足を止めた。


すぐそこのコンビニに行く為に側に車を停めていたようで、ちょうど出て来て車に乗ろうとしていた中年の男性だ。

あれは、私を何度もカラオケに誘ってきてるあのおっさん系のお客さんだよ…。





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