ひな*恋
「………………っ」



そこのコンビニで、雑誌か何かを買ったんだろう。
レジ袋に入った冊子状のものを手にしたあのおっさんは、いつもうちで見せる顔とは違う何だか無愛想な表情。


なんて言うか…あれが素なのかなと思ったら、何か怖い。



幸いまだ私には気付いていないようだけど、このまっすぐの道を行けば必然的に対面してしまう事になってしまうのは確かだ。



ど どうしよう。

仕事中ならまだしも、オフの時に私服でなんか会いたくない。

それこそ「今からカラオケ行かない?」なんて言われる事は請け合いだもの。




「…………………っ」



そうして車に乗り込んだおっさんを確認すると、私は隠れてそのまま車を発進させて先に立ち去ってくれるのを待つ事にした。



そっと電柱の陰から覗いて見てみると…


車のドアを閉めてからゴソゴソ何かをしていて、なかなかエンジンをかける様子がない。


それどころか、今コンビニで買ってきたばかりの雑誌をレジ袋から取り出すと、それを車内で読み始めたじゃないか。



もぉ!
どうしてこういう時に限って、なかなか行こうとしないのよぉ!!





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