ひな*恋
この道をまっすぐ行って、左に折れたらうちのアパートに着く。


だけどもし違う道を通って帰ろうと思ったら、スゴく迂回して遠回りをしないといけない。



「今更そんなぁ…」



自転車とかだったらそんなに苦じゃない距離だけど、私は歩きだからちょっと骨が折れる。


昼間ならまだしも、もう夜だもんね。




「………………………
……………………
………………」





散々悩んだ結果。



「…大丈夫っ
知らん顔して通り過ぎちゃえば!」



てなわけで。
下を向いて、なるべく気付かれないようにしながら早歩きで通り過ぎる事にしたわけだ。




(大丈夫大丈夫…っ
昼間と違って暗いからバレたりしないって!)



ギュッと身を縮ませるように肩に力を入れると、私は息さえも止める勢いで足を進めた。





「………………っ」



競歩の選手にも負けないくらい、私は全身の力を足に注いでとにかく早歩きする。



「………………っ」



徐々に近付いていく、おっさんの乗る車。


下を向いて歩くから、今おっさんがどこを見ているかは私にはわからない。



買ってきた雑誌、面白いんでしょ!?

どうか、そのままずっと見ていてーっ




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