曼珠沙華
第三章 赤い絨毯
夏の終わりを
命乞いをする蝉が
告げる
この町へ
引っ越してきて
半年が過ぎ
パートを始めた母が
一輪の赤い花を
貰ってきた
艶やかな
”曼珠沙華”
相変わらず
新聞を読み続ける父に
話し掛ける母
「この近くに
彼岸花が沢山咲く場所が
あるんですって
赤い絨毯のように
真っ赤に染まるようよ」
気のない返事を
繰り返す父へ
懲りずに話続ける母
思春期の僕には
どうでもいい風景だ