曼珠沙華
クラリネットを
練習する教室へ
パート別に別れるらしく
女子の言葉は
パートの先輩から聞いた
話のようだ
「吹奏楽部にさ
西山先輩って言う
ちょっとカッコイイ先輩が居るんだけど
日高さんが 色目使ったって
西山先輩の取り巻き軍団が
怒り狂ってるって話」
じゃれ合う二人が
窓の外を見ると
そこには 日高の姿は
すでに なかった
「集団虐めとか?」
強張った表情で
冗談を返す男子
首を若干 傾けた女子は
何とも言えない顔をし
「よく わかんない…けど
巻き込まれたくないから
結構 みんな部活が終わると
急いで帰るようには
してる…かな」
曖昧な黙秘に
誰もが 溜息を吐き
「女は怖い怖い」
日誌を持った男子が
鞄を持ち教室を出て行った