曼珠沙華
第六章 赤い夕日
小銭を握り絞め
隣町まで
自転車を飛ばす
廃れた煙草屋
小さな窓口には
店主の姿はなく
二台並ぶ
煙草の自販機で
煙草を買う
何度も買い慣れると
初めて購入した時のような
緊張感もなく
平然と買えてしまう
服装の乱れもなく
髪を脱色している訳でもない
平凡な中学生
声を掛けられたところで
親に頼まれたと
答えれば
問題にすら
ならないだろう