曼珠沙華
「みんな 元気?」
電話越しの友達の声は
距離を縮め
玄関を飛び出してゆけば
すぐにでも逢えそうな感覚に陥る
「元気だよ
てっちゃんと俺は
サッカー部に入ったぞ
つーちゃんは?」
「部活入ってないよ
帰宅部」
「そうか
そうだな つーちゃんは
運動オンチだからな」
友達が嫌味もなく
笑い声をあげる
「ほっとけよ」
苦笑しながら
涙が零れ落ちた
「清美が 寂しがってたよ
なんで居なくなっちゃったのって
泣いたんだぜ
モテモテですな」
思わず笑いが
込み上げた
「清美って 武の妹じゃん
まだ幼稚園児だろ」
「馬鹿 何言ってんだ
もう小学校一年生だぞ」
「たいして 変わらん」
「まぁな」
半年ぶりに
自分の笑い声を
聞いた気がする